クーパー(ジャーマン・ショートヘアード・ポインター)、メルちゃん(ボクサー)、まめちゃん(バドが拾った黒猫)と暮らす、犬ライターが綴る犬馬鹿生活。
カプノサイトファーガ症を正しく理解
2010年05月25日 (火) | 編集 |
いま、ヤフーのトップページに、こんな記事が出てます。
カプノサイトファーガ症についての注意喚起の記事です。
薔薇の館の後編の前に取り急ぎ。

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犬猫の口内菌感染、8年間で6人が死亡
5月25日0時2分配信 読売新聞
 犬や猫の口内に常在する細菌が、かまれたり引っかかれたりした人に発熱や腹痛などを引き起こす「カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症」で、2002~09年の8年間に14人が発病し、うち6人が死亡していたことが、厚生労働省のまとめで分かった。

 同省は、ホームページで「めったに感染しないが、高齢者や病気で免疫が低下している人は重症化しやすい」と指摘。エサの口移しなど過度な接触を控え、さわった後はよく手を洗うよう、注意を促している。

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実はこのカプノサイトファーガ症、私も4月に国立感染研究所に取材に行って、先月書き上げました。時事通信で5/6に記事が配信されてます。こっちの方が少し詳しいから元原稿を添付します。↓

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~人畜共通感染症を正しく理解する~ 
◎カプノサイトファーガ症

 
 犬や猫の口の中に普通に存在する「カプノサイトファーガ・カニモルサス菌」という常在菌。犬猫にとっては無害な菌だ。しかし人間が咬まれたり、引っ掻かれたりしたときに感染し、ごく稀に発症すると敗血症に至る場合が多く、死亡率が約30%にも及ぶとわかってきた。
 カプノサイトファーガ症の調査・研究をしている国立感染症研究所獣医科学部の鈴木道雄主任研究官に話しを聞いた。「最初の患者報告は1976年アメリカでのこと。89年にカプノサイトファーガ菌と命名されました」。それ以降世界で約250例報告されており、日本では2002年に最初の死亡者が報告され、現在までに14例が(そのうち6例が死亡)知られている。
「ただこの菌は突然現れたわけではありません。恐らく人間と犬猫が一緒に暮らすようになった大昔から存在していた菌です」。新種の菌ではなく、医療が進んで原因菌として判明した。積極的に調査して軽症の人も多く存在することがわかってくれば、本当の死亡率は低い可能性もある。事実、オランダの患者調査では死亡率は約12%とされており、また発症するのは人口100万人あたり0.7人(オランダ)、0.5人(デンマーク)という報告もある。未知な点が多く、患者数が少ないので研究にはまだ時間がかかりそうだ。
 しかし死亡することがあるのは否めず、傷の大きさや深さに関係なく感染する可能性があり、傷を舐められて感染した例もあるので楽観できない。口腔内細菌をゼロにすることはできないので予防は難しいが、「比較的有名な猫ひっかき傷やパスツレラ症と同じ、咬傷や掻傷の際の感染症のひとつとしてカプノサイトファーガ症もあると知っておくことは大事でしょう。発症予防と治療に有効な抗生物質もあります。体に異常を感じたら、早めに医療機関を受診することが大切」と鈴木先生。
 常在菌なので愛犬や愛猫が悪いわけではないと理解し、もしも今までにない具合の悪さなどが生じたら、犬猫を飼育していることや咬まれたことなどを医師に申告し、適切な抗生物質投与などの治療をしてもらうと安心。また医療機関もカプノサイトファーガ症という病気があることを知っておいて、いざというときに適切な処置を患者に行うことも重要だ。

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つまりですね、カプノサイトファーガ症をいたずらに恐れ、パニックになる必要はありません。いちばん重要なのは、正しい知識を得て、正しく認識し、いざというとき正しく冷静に行動することです。
でも、同じことを報道するのでも、犬が嫌いな人が書けば、ねじ曲げて書くこともできる。大げさに恐怖を煽るような表現で報道することもできる。だから私はこの問題を「パニックになるかもしれないから内緒にしておこう」ではなく、前もって正しい情報をひとりでも多くの飼い主や医療関係者が知っておくべきだと考えました。

ちなみに、カプノサイトファーガ症は、まだ普通の町医者の人も認識がないかもしれません。
でも、100万人に1人以下の発症率とはいえ、死亡する例もある感染症であることも事実。糖尿病などの持病がある人や免疫の低い人、老人以外の感染例も少ないですがあります。他人事ではないと認識することも重要です。

だからこそ、いざというときに正しい迅速な処置が必要。人間のお医者さんが知らなくても、飼い主が自衛することも必要かもしれません。敗血症の初期症状など、とにかく「いつになく具合が悪い。いったいどうしたんだ!?」と自分が感じたときは、愛犬や愛猫(よその犬猫でも同じ)に噛まれたり、自分に傷がある部分を舐められたりしたことがないかを思い出し、お医者さんに隠し事せずに申告してください。この菌は、犬猫には無害だし、ほとんどの犬猫の口の中に存在する常在菌だから、犬たちのせいじゃない。犬たちが悪いんじゃないんだもん、堂々と申告しよう。

発症予防や治療に有効な抗生物質があります。
学会誌の発表を抜粋すると、
「カプノサイトファーガ・カニモルサス感染が疑われる際の抗菌剤としては、オーグメンチンなどのβラクタマーゼに阻害されにくい、ペニシリン系やテトラサイクリン系、カルバペネム系等の抗生物質を選択することが望ましいと考えられる」と鈴木先生の考察にまとめられています。
もっと簡単な要約によると、抗生物質の一般名が入っています。
「カプノサイトファーガ・カニモルサス感染が疑われる際には、オーグメンチン、メロペネムなどの抗生物質の使用が推奨される」とあります。

つまり具合が悪くなったときに、人間のお医者さんがカプノサイトファーガ症を疑い、これらの抗生物質を使ってくれれば、そんなに怖れる感染症ではありません。

でも難しいのは、ちょっと舐められたり、歯が当たったくらいで「ひゃー死んじゃうかもっ!!」といちいち抗生物質を投与すべきなのか、ということです。今まで犬や猫を飼ったことがある人なら、舐められたり、噛まれたりしたって、大部分の人が発症せずに、いまも無事に生きていますよね。私だって、犬猫と暮らすことがそんなに危険なら、いまとっくに命を落としている自信がある(苦笑)。100万人に1人以下の発症程度ですし、研究が進めば、死亡率の数字ももっと低いとも考えられます。つまり発症しても、いつのまにか治ってるとかね。だったら抗生物質のオーバーユースにならないのか、ということにもなる。そのへんが難しい。まだ臨床例が少ないので、わかんないことが多い。
軽視をしてもいけないし、パニックになってもいけない。

とにかく、今までにないくらい体調が悪い、体全身が具合が悪い、なんかいつもと違う、と思ったら、病院に行きましょう。そしてもしもお医者さんがカプノサイトファーガ症のことを知らなかったら、教えてあげて(笑)、詳しい検査をしてもらうなり、抗生物質を投与してもらいましょう。厚生省も注意喚起していますから参考にしてください。

そして、もうひとつ私が声を大にして言いたいのは、こうした感染症が報道されたからといって、自分の犬や猫を捨てようと思ってはいけない。ブルセラ症などのときは実際捨てられる犬が増加したそうです。悲しいことです。愚かなことです。また、家族や親戚や知人が飼っている犬猫を敵視する、あるいは捨てるように促すような発言をする人を増やしてはいけないと思う。そういう人は、この病気を正しく理解しているとは思えません。

狂犬病にはワクチンがあり、予防できるけれど、たしかにカプノサイトファーガ症はワクチンで予防できない病気です。だけど、人間の口の中にも常在菌がいて、虫歯になったり、歯周病になったりするのと仕組みは同じ。歯周病の菌も、血流などを通じて全身にまわって、全身性の重病を引き起こすこともあるらしいじゃん。だけどわかっていても虫歯菌や歯周病の菌を口の中からゼロにすることはできないから、うまく付き合っていかないと。それと似てる気がする。

騒ぐのは、無知ゆえです。無知ほど、恐ろしい菌やウィルスはないのかもしれません。
だから「知るワクチン」という言葉があるんですね。正しい知識っていうのは、病気を予防する力もあるんですよ。

正しい知識を身につけた飼い主さんが、1人でも増えますように。
動物ジャーナリストのはしくれとして、心から願います。

25プノサイトファーガ

(バド爺と暮らして15年間と半年、カプノサイトファーガ症を発症したことはただの一度もありませんって。だけどちゃんと手を洗うとか、犬の食器と人間の食器を分けるとか、噛まないようにトレーニングするとか、キスしないとか、人んちの犬猫に許可なく触らないとか、猫の爪は定期的に切るとか、そういう動物との基本的な距離感を保つルールは実行した方がいいと思います)


追記:リンクフリーです! お知り合いの犬友達にもぜひ知ってもらってください。
   みんなの力で「知るワクチン」を広めましょう!



コメント
この記事へのコメント
ありがとうございます
バドバドさん お久しぶりです!
カプノサイトファーガ症について詳しく、分かりやすく説明して下さってありがとう!!
yahooニュースで見てからとても気になっていました。

こういうニュースでホレ見たことか!といきなり犬をばい菌扱い、必要以上に敬遠する人実際に居ます。

うちのおじいちゃん、おばあちゃんでさえ、孫が感染するんじゃないかとワンズに抱きつく子供たちを見て神経質になる訳です。

正しい距離や躾は、健康的な動物との付き合いが出来るって意味でも大切なんですね(うまく言えないのですがが)
こちらの記事のURLを私のブログに貼っても宜しいですか?ひとりでも多くの方に知ってほしいです。
ニライママ
2010/05/26(水) 08:21:02 | URL | ニライママ #srORX40g[ 編集]
ニライママ様

もちろんです。ぜひリンクしてください!
(ほかのバドブログ読者のみなさんも、ぜひリンクしてください!)

これを読んで、そういう反応をしてくれる人が、1人でもいることが、私のライターとしての存在価値です。
どうもありがとう。

私も取材等で犬に噛まれたとき、外科の先生や看護婦さんに口々に「あーあ、犬の口はばっちいのよ」とか「だから犬は困るんだっ。手放さないのか」のようなことを言われるたびに、まだまだ犬に対する理解度が低いな、民度が低いな、と感じます。しつけしていない犬があたりかまわず噛むのは問題ではありますが、本来犬や猫には動物行動学的になんらかの噛む理由があって、そういう行動をしているわけです。大部分は人間に落ち度があるケースが多い。トレーニングしてないとか、甘やかせすぎとか、犬猫が嫌がる本能的に防御せざるえない行動をとってしまったとかね。

ニライカナイのおじいちゃん、おばあちゃん、
大丈夫ですよ、神経質にならなくても(笑)。
だけど今回、朝日新聞や読売新聞でも出ているので
となると、今後いろんなメディア(テレビや週刊誌など)が、もっとカプノサイトファーガ症について報道をし始めることが考えられます。けっこうネタって、他社の使い回しですから(苦笑)。そのとき、もっとおもしろおかしく、もっとパニックを煽るような表現をする媒体もでてくる可能性があります。
でもそれはこの病気を日本で研究している第一人者の先生も望んではいません。(ほんとに真摯ないい先生だったのよ)

飼い主の方が先に正しい知識を得て、冷静に情報を取捨選択することも大切だと思う。
ぜひぜひ、犬友達に「知るワクチン」を広めてください!


2010/05/26(水) 11:47:41 | URL | ばど吉 #-[ 編集]
カプサイシ…いや、覚えられそうにない名前ですが、「知る」ということが大事ですよね。知って怖いこともあるけど、知らない恐怖ってもっと性質が悪そうですし。子供の頃は屋外で飼われている犬を目にすることが多かったですが、その是非は別として、その時分はむしろ自然な距離感が保ちやすかったのではないかと思います(室内飼いとは違う衛生面での問題はあったのでしょうが。)ちいさいお子さんのいるご家庭とかは特に心配なニュースなのだろうな。私も勉強になりました!
2010/05/26(水) 17:38:07 | URL | mari #-[ 編集]
はじめまして!
1歳半のGポインターと暮らしているきーやんです。
毎回楽しんだり勉強させてもらってます(^^)
5月19日の神戸新聞にも、カプノサイトファーガ症について載っていました。そして写真を見たとたんビックリ(゜o゜)!顔を見て絶対クーパー君だと思いました!!
クーパー君が載っているので、この日の新聞は捨てずに保管してます(〃▽〃)←ある意味遠く離れたストーカーかも(^^ゞ
これからもご活躍楽しみにしています♪
2010/05/27(木) 00:45:35 | URL | きーやん #-[ 編集]
mari様♪
うん、ほんと「知らない恐怖」ってあると思う。
それとか私の場合は「わざと大げさにパニックを煽るように書かれる恐怖」。
ライターの書き方ひとつで、右にも左にも、意外と振れるもんなんです。
小さなお子様よりもむしろ40代以上が今までの症例では発症してます。
他人事とは思わないことが大事だよね。
私も今後やばーいことになったら、そのときは抗生物質を使ってもらうので、なーんにも怖いことはありません!(笑) 
この仕事をしている以上、たまにはリスクはあるけど、受けてたつさー!

きーやん様♪
嬉しいです!
1歳半のジャーポのセサミン!
これからもどうぞよろしくお願いします。
神戸新聞、正解です(神戸新聞さんからは詳細を求めるお問い合わせをいただいたので掲載されるであろうと思っておりました)。
でもよくクパってわかったね!
新聞、今度、デジカメで写真を撮って、メールしていただけると嬉しいです。地方新聞の掲載紙、なかなか私には来ないので見たいです。
神戸の方なのですか?

セサミンの先代のシェパードのブログ、少し拝見しました。若くして胃捻転だったのですね。お悔やみ申し上げます。バドも3回、3歳前後に胃捻転で死線を彷徨ったので、他人事には思えず、胸が締め付けられる思いがしました。

だけど、いまは、胡麻ふりセサミンがいる!
(バドも毎日セサミン飲んでるぞー! おかげで肝臓の数値、よくなったぞー!)
いつか絶対お会いしましょう!
2010/05/28(金) 19:24:09 | URL | ばど吉 #-[ 編集]
拍手の方にコメント書いた者です,,,
二重投稿すみませんですm(_ _)m

書いた後でこちらにコメントすれば良かったと慌てていじり操作ミスりました,,,

腰椎に菌が入り熱が下がらぬまま敗血症で入院している高齢の母がカプノサイトファーガ・カニモルサス症の可能性があるかも…ということを医師に話すべきか余計なことなのか悩んでいた所だったのでこちらの記事を読む事が出来て良かったです
有難うございました!
2010/06/27(日) 20:41:40 | URL | くぅ #-[ 編集]
お役に立ててよかった
♪くぅ様
拍手コメントの方も拝読しました。
猫に囲まれて生活されているお母様が敗血症になったとのこと、心配ですが、このブログが病気の治療のヒントになれたら、これほど嬉しいことはありません。
医師がもしカプノサイトファーガ症について知らないようなら
厚生省に確認してもらってもよいと思います。
この新聞報道後、厚生省もプレス発表をしていましたから、
いまは厚生省への問い合わせも多いタイミングだと思いますので
地元病院の紹介や医師への指示など適切な対応をしてくれるかもしれません。
「おかしいな」「もしかして」と思ったら、どんどんお医者さまに質問し、インフォームドコンセントをしていくことが大事なのは、医療でも獣医療でも同じだと思います。

ほかにも猫の飼い主さんから複数メールをいただいております。
みなさん勉強熱心だなと思いました。

お母様お大事に。敗血症が速く回復されますよう、お祈りしています。


2010/06/28(月) 13:47:13 | URL | ばど吉 #-[ 編集]
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