肥満細胞腫とは

えーっと、ダックスちゃんの原稿をいっぱい書かなきゃいけないのですが(K本さん、ごめんよ!)、心を落ち着かせるために、まずブログにタビィの現況報告を(文字を書くことがいちばん自分の心の整理に役立つもよう。職業柄でしょうか)。そろそろ本気で仕事に集中しないと、ほんと周りに迷惑をかけかねないので、とにかく冷静さを取り戻すために、まずこっちを書きます。

「肥満細胞腫」というガンについて。今回の原稿は監修の先生がつくわけではないので(笑)細部に私の理解の乏しさがあるかもしれないけど、だいたいこんなガンだということを、とくに老犬・老猫、またこれは私の勝手な推論だけどアレルギー体質の犬を飼っている方にも知っておいていただきたい。

まずタビィの尊厳(!)のために書きますが「肥満細胞腫」は、肥満の犬になりやすいガンというわけではありません。「肥満細胞」とは、虫刺されや花粉など外部からの「敵」に反応する細胞で、敵を感知すると「ヒスタミン」とか「ヘパリン」という物質をだし、患部に炎症や痒みを起こして、その異物をやっつけたり、鼻水を流して追っ払おうとする、体を守る大事な役割をしている細胞。かゆみ止めで「抗ヒスタミン剤」とかよく聞くでしょ。皮膚だけでなく、内臓にも、体のどこにでも存在している細胞です。

だからこそ、こいつがガン化すると、非常にタチが悪い。つまりこのガンは、皮膚だろうが、内臓だろうが、骨髄だろうが、生殖器だろうが、目玉だろうが、顔面だろうが、どこにでも肥満細胞腫というガンとなる。血やリンパの中にも入りやすいので、つまり全身にすぐちらばりやすい。しかも、そんなふうにいろいろな場所に存在するせいか、症状の姿、形、進行具合も千差万別。急に大きくなるものもあるし、いったん小さくなるのもあるし(ずるいね)、うちのタビィみたいにミカンくらいでかいのもあるし、「虫刺されかな?」程度の表面上の赤みだけのこともあるし、個体差が大きい。だから飼い主は見逃しやすいともいえる。

そして、いまのタビィがそうであるように、2週間前にしこりを見つけたばかりでも、すでに末期状態で「明日死んでもおかしくない」と急に言われることになるのは、ガンが血の中をめぐり、たとえば心臓にたどりついて転移したら心筋症でパクッと死んじゃうかもしれないからだ。腸にたどりつけば、急に腸閉塞を起こしてショック死しちゃうかもしれない。急死はしなくても、内臓が蝕まれまくって、手の施しようがなくなったら、安楽死も勧められる。グレード(ガンのタチの悪さを示す段階。肥満細胞腫のグレードは1〜3の3段階。3がいちばんタチが悪い。タビィは現在グレード2)にもよるだろうが、ステージ(進行度)が存在しないガンとのこと。ステージがあるとする学説もある。これは担当医の信ずる学説により、判断が違うだろう。ただ確かなことは、前述したように、形態や進行度もさまざまなので、腫瘍を取ってもすぐ別の場所に雨後の竹の子のように出てきたり、大仏の頭のボツボツのように全身に同時多発的に発現することもよくあるそうだ。考えるだけで恐ろしい。

ちなみに良性の肥満細胞腫もある。人間にも肥満細胞はあるが、悪性にはならず、良性だそうだ。でも犬や猫の場合は残念ながら悪性となることが多い。

肥満細胞腫になる原因は明らかではない。どの犬でもなる。ミックス犬にも多いというから、犬種特有の遺伝疾患ともメカニズムがまたちょっと違うのかもしれない。犬のガンで最も多い乳腺腫瘍についで多い皮膚腫瘍。その中でいちばん発現するのがこの肥満細胞腫だ。恐ろしいことにわずか生後数週間でもなってしまう例があるそうだが(本当にそういう子は気の毒すぎる)、でも基本的には老齢化した犬猫に多い。細胞が老化し、免疫機能が壊れてきちゃうせいかもしれない。

ついでにまだ立証されていないが、免疫機能に関わる細胞のガンだけに、アレルギー体質ともかかわるのかもしれない。アレルギー性皮膚炎で以前炎症を起こした部位にできるケースも猫であったと書かれていたが、言われてみると、今回最初にタビィにできた場所は肛門横。ここは本来、肥満細胞腫ができるとは先生も想像しなかったようで、悪性だとしたら別のガンを疑うものだったが、そういえばタビィはノミか何かのアレルギーか蒸れか、お医者さんによって診断名は違ったが、おしりのしっぽの横、つまり今回の腫瘍ができた場所は、若いときからよく夏になると、禿げて、じゅくじゅくして、赤くなって痒がる、皮膚炎を起こしていた部位であった。「肥満細胞が過剰に働いて炎症を起こしやすいところは、細胞の遺伝子が傷つきやすくなる」と書いてある文献があるが、私もその意見に賛同したい。だから、タビィと同じように、もしかしたら、若い頃からそうした皮膚炎を起こしていた部位は、年をとってから、肥満細胞腫が発生しやすい部分かもしれないので、みんなの愛犬も十分にそこは日々注意してチェックする習慣をつけてほしい。小さいうちに見つければ、取り除くのもラクだからね。タビィの失敗を次の教訓として活かしてください。





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プロフィール

白石バドバド花絵

Author:白石バドバド花絵
犬歴21年、猫歴19年の雑文家。犬2頭、猫1匹がごろごろ爆睡しているとなりで、日々、犬原稿を執筆中。
《(c)kae Shiraishi/文章や画像の無断転載はお断りします》

『東京犬散歩ガイド』
白石花絵著
(オーシャンライフ発行)
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『最新犬種図鑑』 
監修:ジャパンケネルクラブ
構成・文:白石花絵
(インターズー発行)
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