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陣馬形山キャンプ(3)

お待たせしました、陣馬形山キャンプの続きレポートです。
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長い夜。
クパは、ほとんど寝られてない。もれなく私も寝られない。
どんどんマズルや顎、胸の浮腫は大きくなる。首元の浮腫はぐにゅぐにゅグレープフルーツ大のサイズ。どんどん浮腫が下がってきてる。このまま毒が心臓とかに回ったりしたらどうなるんだろう。気が気でない。
クパはお地蔵さんのように薄目を明けて、なんか耐えている。
ヘビに咬まれたら痛いんだろうか。しびれるんだろうか。どう苦しんだろう。
クパはハアハアはしていない。じっとしてる。耐えてる。犬って痛みに強いとは言うけど、その堪え忍んでいる姿を見るのが、辛い。犬って、泣き叫ばないから偉い。だけどそれだけに心配。
歯茎の色を強引にチェック(マズルを触られるのは嫌がる。咬まれた周辺は痛むらしい)。
紫色にはなってない。呼吸速拍もない。心臓もバクバクしてない。ショック状態にはなってない。アナフィラキシーにはたぶんなってないと思う。よし。落ち着け(私)。

首がどんどん太くなってきた。あ! ハーフチョーカーがきつそうだ!
あ、でもマズルなど顔が腫れすぎて、もう抜けない。やばい! 一瞬動転して泣きそうになったよ。
でも幸い、たまたまトレーニング仕様で、きゅっとよけいに締めることのできるデザインにしてもらっていたおかげで、チョークなのに輪っかではなく、普通の首輪のようにはずせるデザインがよかった。

でもネームチョーカーまではずす勇気がなく(長野の山中で迷子になったら意味がない!)、ネームチョーカーはまだ少し余裕があったからそのままにしていた。
しかし1時間後にはネームチョーカーのまわりにもたるんだ浮腫の皮膚が覆い被さってきて、首がきつそう。呼吸困難になったら困る。迷子の危険をとるか、気道確保か。しょうがない、気道確保するしかないでしょう。
クパ、こんな山中で、丸裸。失踪したらどうするんだ。泣きそう。
(もうこのへんになると冷静さを欠き、写真を撮る余裕もない)

夜中の3時半。
すぐ近くで、「ピュッ!」と甲高い声。シカだ。

クパ、きゅつと頭を持ち上げ、警戒する。
毒ヘビに咬まれているのに、ちゃんと仕事してる。えらいな。
メルは爆睡してる(おいおい)。

クパ、テントの外に出たがる。シカが気になる。
そりゃー、クパとしては、シカの存在が気になるのは当たり前。でもおまえはいま首輪もなにもつけていない丸裸状態。いつもはできる呼び戻しだって、シカを見つけても完璧かどうかまだやったことない。ましてやいまは体内に毒ヘビの毒が回っている。失踪した先で倒れたら、戻って来られないじゃないか。「クーパー、だめだよ、今日はシカは放っておきなよ」。泣きそう。だけど、クパは凛とした顔して、テントを突き破る勢い。ああ、ある意味、それでこそガンドッグなんだよね。
わかったよ、外に出よう。納得するよう外を見せてあげる。だけど、放さないよ。
クパの胴体をがしっとつかんだまま、外にでる。

シカは見えるとこにはいない。
ほらね、納得した?
でもクパは、シカのいるらしき方角をぴしっと凝視してる。行きたがる。
だめだってば、絶対に放さないよ。泣きそう。

あ、そうだ。もしかしてお散歩バッグに、引っ張り防止用ハーネス、入ってないかな!?
クパは、ハーネスを見せると玄関でちびることがあったから、玄関内でハーネスをつけずに、玄関の外で装着させることが多かった。
「トールっ! お散歩バッグの中に、緑のハーネス入ってない!??」
寝ているトールをたたき起こす鬼妻。(クパの一大事じゃ、そんなの当たり前!)

寝ぼけてるトール、返事はするものの、行動がとろい。「早く探して!」
私は両手でクパの胴体を抑えているんだから。

「あったよー」(呑気すぎないか!?)
「よかった! じゃ、そのハーネスにさっきはずしたネームチョーカーをどっかにぐるぐる巻いて!」(そうすれば万が一にも誰かが電話番号に気がついてくれるだろう)

夜中に、真っ暗な山頂で、クパにハーネス装着。これでリードもつけることができる。
ほれ、シカが気になるなら匂いをかげばいい。そのかわり藪の中には行かせないよ。

ついでにオシッコチェック。それとお水飲んでみたらどう? でもお水は飲まなかった。オシッコはしたけど。
歩様は大丈夫。フラフラしてない。わりと普通。いつもどおり。それはちょっと安心した。四肢に神経症状などはでてないようだ。

「ピュッイ!」 シカさん、クパを警戒するなら早く遠くへ行っていただけませんかね〜。
まぁ、シカさんの陣地に遊びにきてるのはこっちだけどさ。

30分ほどシカチェックをさせたあと、テントに入る。
毒が回るからなるべく安静にしておきなよ。納得したでしょ? 寝よう寝よう。

でもクパはやはり横にはなれずに、舟こいでる。

いろんなことが頭の中をよぎる。
もしヘビに咬まれたのが、トールだったら、私は山を下りたんだろうか。いまクパをここに留めているのは、犬だからって冷遇じゃないのか。と、自分の判断を責めた。でもトールが咬まれたんなら、駐在所にでもなんでも駆け込んで救急病院を教えてもらうことができるけど、犬の場合は難しい。落ち着け、焦るな。ラッキー(私が小学生の時に飼ってたマムシに咬まれて顔がマスチフみたいになった犬)はひどい顔になったけど、でも死ななかったじゃないか。下手にクルマに揺られて動物病院を探すことが得策とは思えない。こんな夜中の細道、交通事故を起こす可能性もある、いまの私の精神状態なら。冷静になれ。

そうだ、朝いちばんに役場に行こう。役場の場所はわかる。動物病院を教えてもらおう。東京に戻って病院に行くより、地元の獣医さんの方がヘビ情報を持っているはずだ。役場って9時からかな、8時半からかな。クパ、それまでの辛抱だ。でも犬の場合、毒ヘビの毒にどういう対処療法をするんだろう。血清はないはず(とくにヤマカガシは人間でも遠くのヘビセンターしか持ってないはずだ)。ヒスタミン打つの? 

この山頂は、携帯電話も圏外だったので、友人の獣医さんにも連絡できない。

でも寝られない。
クパ、死ぬなよ。
私は、ときどき「バド、死ぬなよ」と、クパの名前をよく間違えた。なぜ?
気が動転してる?
それとも、クパはまだ当分死なないと思ってるから、「頑張れ、まだ死ぬなよ」と心配したことがなく、心配したら口が勝手に「バド」と呼んでしまうのか。
それとも、懐中電灯だけの薄暗いテントの中、太くなったマズルのクパのシルエットがバドっぽいから?
理由はよくわからないけど、何度も何度も私はクパの名前をバドに言い間違えた。
落ち着け、私。

うとうとしていたら、まだ薄暗いのに、野鳥の合唱が聞こえてきた。その声にクパも反応した。朝はもう近い。何時だ? 4時半だ。
クパ、オシッコはどう? お水飲む? 外でてみようか。

もうシカはいない。クパの歩様もいつもどおり。だんだん明るくなって、私にも見える時間。放してみるか。

相模湖嵐山_1_41

雨やんだね。
クパの動きは問題ない。オシッコもちゃんと出てる。よしよし。

クパは、3時半のときにお茶碗に入れた水を、ごくごく飲み始めた。おっ。よく飲むな。解毒に水は必要なのかな。どうぞどうぞ、飲みたいだけ飲みなさい。

クパの動きを見たいから、ちょっと山頂行こうか。

相模湖嵐山_1_43
早朝の山頂。霧でいっぱい

おまえを咬んだヘビのやろー、どこにいるんだ。よくもクパを傷つけてくれたな。
と、思うけど、でもヘビだって防衛本能だからな−。

でも不思議なことは、この山頂付近で咬まれたに違いないのに、クパの挙動が一切変化なしということ。普段こんなに警戒心があり、昨日の七厘だってすごく嫌がって遠くに行こうとしんなりしてたくせして、ヘビのいたであろう藪は平気なの? たしかに昨日ほど藪こぎを長時間してないけど、でもちょっくら入ったりはしてる。
馬鹿じゃないから他の生き物に攻撃されたことは覚えているであろうに、この平常心ぶり。不思議。犬にとって、ヘビは、人間が思うほど脅威ではないのか? 自然界では当然あるべきアクシデントで、そんなにびっくりはしないのか? 
犬って不思議。犬って強いもんだ。ちょい尊敬。

相模湖嵐山_1_44
全然余裕あるクーパー。おまえってば、ちょっとかっこいいじゃないか


そういうクパの平常心ぶり、平常どおりの行動を見ているうちに「これは、死なない。大丈夫だ」という気持ちが広がってきて、写真を撮る余裕が生まれてきた。

相模湖嵐山_1_45

ブラッドハウンドもびっくりのマズルと首と顎一体化。ああ、痛々しい。
口角のとこ、ピンポン球より大きく丸く腫れてる。

相模湖嵐山_1_46

でも意識は鮮明。オスワリといえばちゃんといつもどおり座るし、呼べば普通に来る。大丈夫。

相模湖嵐山_1_47

首の下のぶにゅぶにゅが時間経過とともに下がってきている。
(あとで聞いたら、浮腫は重力で下がってくるそうだ。だから胸の下、脇あたりで止まるのが普通。心臓とか内臓に吸収されることはないとのこと。でもこの時点ではすごく心配だった)

相模湖嵐山_1_48
ハーネスにぐるぐる巻きにしているネームチョーカー。もしもこういう犬を見かけたら、首に装着できなかったやんごとなき理由があるということです(涙)

まぁ、多少はしんなりはしてる。顔はうかないけど。右目(向かって左)が少し細くなっているのは顔面が腫れてるからだね。でも、それでもお山は興味深く、楽しくて探索したくて仕方ないらしい(涙)。ううう、ガンドッグってやつはー。

相模湖嵐山_1_49
高山のナデシコ? お花の写真を撮る余裕も生まれた私

またテント基地に戻る。

相模湖嵐山_1_50

クパ、すごく水を欲しがる(おいおい、ベンチに土足で上がるなよ)。寒いくらいの気温なのに。メルは全然飲まないのに。走ってないのに。
きっと毒のせいだ。解毒中なんだ。それか発熱でもして脱水になったかな。3時半の段階では、飲む気力もなかったのか。

野鳥が鳴いてる。
じゃ、ちょっと違う小道も散策してみる?

相模湖嵐山_1_51

よいクマザサのトレイル。
クパは嬉しそうに先に進んでいった。

相模湖嵐山_1_52

あれ、クマザサ。クマ? あ、山頂付近でクマがいたんだよね。すごくクマさんがいそうな条件が揃ってない?
ちょいやばくない? クマ鈴ないし!
クパ! ひとりで先先進んじゃだめだよ! クマと鉢合わせしたらどうする! ヘビと闘った後に、クマとまで闘ったら私、心折れる。

相模湖嵐山_1_53

クパを呼び戻し、私は、早朝からひとりで(トールはテントで爆睡中)、大きな声で独り言を喋りながら、トレイルを散策しました。「クーパー、遠くにいかないでーってばー」「メル−、いかにもクマさんがいそうだねー」「まだ下界は見えないねー、今日は晴れるかね−」「マチュの檜原村は雨はあがってるかねー、マチュは楽しんでるかねー」などと意味もなく延々と独り言(笑)。おかげでクマさんとは遭遇しないですみました。

さあ、戻るか。クパが元気そうな状態を確認できたから、もうちょい寝ようよ。まだ5時すぎだから。

相模湖嵐山_1_54
ぎゃっ! メルのおなかに小さなブヨのような吸血昆虫がいっぱいついてた!

クパのおなかにはほとんどついていないのに、メルのおなかは毛が薄いからいっぱいくわれている。しかもこのブヨ、蚊と違って血を吸っている最中は逃げない。憎たらしいほどに大胆不敵。逃げないから、つぶしやすい。つぶすと、蚊みたいに血が出る。テントに入る前に払ったつもりだったけど、まだいる。テント内の壁に逃げたやつもつぶしまくったので、テントが惨劇な感じになった。

このブヨ、人間はくわないみたい。なぜ? 獣専用なのかしら。

ま、ブヨくらい、どーってことない。生命の危険がないものは気にしないさ。

とにかくクパのいつもどおりの動き、行動を見て、ずいぶん私は平静さを取り戻してきました。

大丈夫、これならクパは死なない。

長くなったのでまたもや、つづく!

Comment

  • マツタケ母
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ああ、長い夜だ~~~!!

クパ~~~~、痛かったろうに・・・
そこまで腫れるか~~~、痛々し過ぎるよ~~~涙

しかし、犬って強いな!こんな状態でも、鹿に反応!


蛇に咬まれても、そう簡単には死なないんだね?!
なんだか、明日は我が身で、レポートを読ませて頂いたけど、クパとばど吉さんが身を持って体験してくれて、すっごく勉強になった。ごめんね!ごめんね!
だけど、あのお山に行ったときの、あの嬉しそうな顔、走りっぷりを見たら、危険とは隣り合わせだってわかってるけど、連れて行ってあげたいもの!
実際の猟犬は、こんな事、よくあるのだろうね。
ゆえに、逞しいのかな。

クパ、本当に災難でしたね。
美男子に戻って良かった~~~!

メルちゃんの柔らかいお腹に群がるブヨ!許せん!!!

  • ばど吉
  • URL
♪マツタケ母さま

長い夜だったよ〜。眠いのに寝てられない辛い夜。

でもクパはけっこう脳みそも体もしっかりしてたよ。
患部はかなり痛かったみたいだけど。でもキャンともスンとも言わない。触っても困るけど、唸るほどじゃない。えらかった。シカにも通常通り反応してたし。
(メルはくたびれて勤務放棄すぎ。なんのための番犬か。クマが来ても寝ていたに違いない。笑)

ごめんねーだなんて言わないで!
私がこれを長々と書いたのも、いつか万が一同じ状況にあってしまった飼い主さんの心の準備のために書いているんだから。
とりあえず知っておけば、少しは何かの役に立つと思って。

山野に行くときは、リスクはつきもの。仕方ないよ。生きるってリスクだらけ。
でもガンドッグたるもの、リスクのほぼない温室育ちと、リスクが高い山野爆走生活のどっちが幸せか、って犬に聞いたら、日本語が喋れたらきっと「山野爆走生活」と言うに違いない。と、私が信じている。
それで万が一、不幸にも短命になったとしても、誤解を恐れずに言えば、それも天命だということ。

とはいえ、いま、すぐ八王子のお山にふたたび出かける勇気はない私。実はちょっぴりびびってます。またすぐ咬まれたらコワイ〜〜〜っと思ってしまう、へたれな私。だめね。きっとクパは今日にも走りに行きたい気まんまんよ。

整形手術に失敗して腫れて別人(別犬)になった疑惑のクパちゃん、もとの美男子に戻りました。もうヨダレも垂らしません! (メルは実力で垂らしてます)

メルのお腹のブヨこそ、ほんと頭きたよーー。次から次へと何十匹も殺しました。

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